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<腰椎ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症・・・何回で治りますか?>

 どちらも骨上の変性をともなっているため、積極的な治療をしても、改善しにくい症状です。医師によっては治癒しないとする場合がありますが、当院の経験では、どちらも治癒に至ります。
 これまで何人もの治療をしてきて、ヘルニアは10回、狭窄症は15~20回程度の治療で、治るのではないかとの感触を持っていましたが、最近、私の予想の通りの臨床例がありましたので、具体的に示したいと思います。
 いずれも普通程度の痛みで、治療後数ヶ月を経過して、日常の仕事や生活の中で悪化していないというケースです。

 
 

【腰椎ヘルニア】 21才 男性

<初診> 最初はぎっくり腰で来院し、筋性腰痛の治療をしていたが、回復後3週間ほどして、痛みが再発したので、ヘルニアではないかとの予想で治療を開始。
整形外科のMRI検査を勧めたが、未検査。
腰椎4,5番を圧して痛みがあるので、この部位にヘルニアがあるものと思われる。

 (治療) 基本的には脈証と腹証をととのえた上で、腰椎間に鍼をして炎症を抑えつつ、椎間をひろげるという治療になる。また患者の特長にあわせて、身体がゆるむようなツボを選び刺鍼してゆく。

<2診> 10日後
週の中ごろまでは痛みなく仕事ができるが、後半になると痛みが増す。

<3診> 1週間後
仕事が忙しく、週のはじめから痛みがあった。

<4診> 1週間後
患者の話を聞いているうちにネガティブな面が強いことに気がつき、患者自身も同意するので、「うつ」を解消するような治療も加える。

<5診> 1週間後
同様の治療

<6診> 1週間後
火曜日から痛みが出る。
骨盤にゆがみが出ているようなので、これを矯正するように治療。

<7診> 4日後
週半ばだったが、一時的に痛みがひどくなったので来院。
精神的な平衡をたもつ治療とともに、身体・骨盤のゆがみを矯正する治療をくわえる。

<8診> 1週間後
腰椎を圧した痛みは、5番のみ。
身体のねじれを矯す治療。

<9診> 1週間後
週の後半から痛みが消えた。
本日から腰のまわりには細めの鍼を用いる。

<10診> 2週間後
昨日まで痛みはなかった。SLRテスト陰性。

≪ 考  察 ≫
 その後3週間たって来院したが、腰の痛みはないということで、治療を終了した。
若い患者さんなので、身体の回復そのものは早いはずだが、気分的な面からブレーキがかかっていたとも思われる。
 途中で何度か痛みが悪化するが、治療を継続すれば、ほどなく治癒することを示している点でも、典型的なケースといえる。

 
 

【腰部脊柱管狭窄症】 75才 男性
ハイキングが好きで、年に何度も出かけているが、この頃は1時間ほど歩くと右殿部から下肢にかけて痛みがでる。休みながら歩行すれば大丈夫。

<初診~7診>
足背動脈・内踝後側の動脈の拍動は、いずれも明確に触れられるので、脊柱管の
狭窄があっても、初期のものと思われる。
腰椎に圧した痛みはないが、殿部の痛みがあるという箇所は、神経痛を原因とする
以上に硬いので、梨状筋症候群も同時に疑う。
この二つの治療を1週間に1度のペースで行なう。
梨状筋症には起始と停始、拘結部に鍼をするがあまり状態は変わらない。なかなか
緩まないといわれる所以である。

<8診> 1週間後
歩行中に痛みもでるが、ベンチでストレッチするとすぐに治まる。

<9~11診> 1週間に1度の治療
痛みは出るが、弱い痛みになってきている。また殿部の痛みは、梨状筋より、内閉鎖
筋に出ているというので、当該部に治療点を移す。

<12~15診> 1週間に1度の治療
内閉鎖筋の痛みはなくなったが、殿部中央に痛みが出るということで、これは狭窄症による神経痛と思われる。

<16~18診> 1週間に1度の治療
度を越して歩くと、下肢を引きずるほど痛みが出るが、限度の中であれば痛みなく歩くことができる。全体的な調子は、非常によい。

<19診> 1週間後
身体が疲れていなければ、よいペースで歩くことができる。

<24診>
先日ハイキングに出かけて、登り1.5時間は痛みなし、下り1時間でやや痛み、平地30分ほどで痛みがあったが、少々の休憩ですぐに治まった。総合的に判断して、壮健時の半分程度まで回復したので、年齢を考慮すれば治癒したといっていいのではないか、と本人の談話。

≪ 考  察 ≫
 その後は、よい姿勢をこころがけるあまり、反り腰になっていることに気づき、反対に後側への彎曲をもたせるようにしたところ、さらに調子がよくなったという。
 自分でも様々なことを試している患者さんであるが、今回の治療では、16~18診の時点でほぼ治癒していたといえるのではないかと思われる。

 

< 腰部脊柱管狭窄症の鍼灸治療 2 >

【 患 者 】96歳 男性
【 経 過 】5年前より腰痛と右下肢外側の神経痛で、吉祥寺、国立、立川の整形外科クリニックや総合病院を受診しているが、症状は変らず、酷いときは5メートルも歩けない。最近は、100メートルほどの距離を2度ほど休みながら歩く。
長年かかっている総合病院の内科医師に、坐骨神経痛には鍼灸も効き目があるから、2,3ヶ月通ってみてはどうか、と勧められて、自宅から最も近い当院へ来てみた。
【 初診時症状 】L3-4 間に大きな前後のズレ。L5圧痛+
玄関より来院してベッドまで歩く際も、何かにつかまらなければ歩けない。

< 初診時治療 >
L3~5の棘間に置鍼。ほかに大腸兪、裏環跳、下肢外側の痛点に置鍼。

< 第2診 > 初診から3日後
痛みが若干なくなったような気がする、とのこと。が、まだ捉まり歩きは変らない。

< 3診 > 初診から1週間
この日から、灸点紙を使った灸を用いる。

< 4診 >
治療後から帰宅し、その夜は痛まなくなった。明くる日は痛み始める。

< 6診 >
遠くの歯科医院へ電車に乗って行ったので、神経痛が悪化した。

< 7診 > 初診から3週間
これまでベッドに伏せて治療していたのが良くなかったのではないかと考え直し、側臥して治療する。この結果、治療直後の痛みが、ぐっと軽減することが分った。

< 10診 > 初診から1ヶ月経過
全体的にみて1~2割程度、軽減した。

< 15診 > 初診から1ヶ月と17日
院内での動作、歩行は初診時に比べると、ずっとスムースになり、物に捉まらなくても歩ける。この日から、L3~5に直接の灸をすえる。

< 16診 > 初診から1ヶ月と22日
正月休みの間に立川まで出かけたところ、翌日から痛みが悪化。まったくひどい状態で、歩行時は、これまでで最悪の痛み。ただし、臥せているときは全く痛みが出ない。車で来院。

< 17診 > 初診から1ヶ月と19日
下肢外側の痛みに、居髎穴を取る。これで痛みが止まらなければ、骨盤孔の穿刺を考える。タクシーで来院、帰宅。

< 18診 > 初診から1ヶ月と23日
幸いに痛みが軽減しはじめる。タクシーで来院、帰宅。

< 19診 > 初診から2ヶ月
ほとんど年末の状態にまで回復。非常に調子が良い。明日より予定があるので、いったん一区切りとする。全体的に痛みは、当初の半分程度。

【 考 察 】
腰痛や神経痛は、痛みが半分程度になれば患者さん本人の自覚としては、ずいぶん楽になったという気がするようである。したがって、痛みを完全になくすというより、半分にするという目標を立てて、患者さんにも納得してもらえると治療する側としても気持ちが楽になる。
この患者さんの治療でポイントになったのは、神経痛部位に対する強刺鍼と、皮膚に直におこなう灸であったと思われる。とくに直接灸は、これまでにも何人もの腰痛、下肢神経痛、腰部ヘルニアの患者さんに行なって顕著な効果があったので、治療を完遂するうえでは必須の方法と思われる。直接灸を用いなくても、治療の目標に到達することはできるだろうが、用いた場合に比べてはるかに時間がかかることは明白ではないだろうか。神経痛部への強刺鍼には6番の金鍼を、また時には反対側を取って髎剌するなどした。

 
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